Happiness arises, radiating in vibrant hues.

『幸せが生まれ、鮮やかな色合いで輝く』ことを願う場所

曖昧に(誘惑なまいきロリータ感想)

readmeを読んだところ、今作でロリータシリーズは5周年なんですね。
私はネットで相思相愛ロリータが評判になった昨年からプレイし始めているので、2年になります。一番えろげをプレイしてた頃と比べると、明らかにプレイ本数自体が減っているのでちゃんとした比較ではないですが、唯一ブランド買いのようなことをしている状態なので、今後も続いていってくれると嬉しいシリーズです。それでは感想始めます。

【シナリオ】

雪では白すぎる。夜では暗すぎる。鈍色で灰色で、ひんやりしていて優しい。
煙みたいにそよいで揺れる。融け合って解けていくような差異のない世界。
曖昧の森。
生も死も混じり合った、存在のない、動きとゆらめきだけの世界。
居場所がない人のための居場所ではない。
居場所がない人が。居なくなれる場所。居なくなって、待っていられる。
心を動かす何かが近づいて通り過ぎるのを。

今作で出てくる言葉の特徴として、曖昧なものを指す言葉が多いのかなと思いました。
鈍色、灰色、薄暮、薄明、逢魔が刻。どれも白/黒、昼/夜、夜/朝の狭間を指す言葉です。物事については明確に定まっていた方がよいことの方が多いと思います。
仕事をしているときの自分を思い出すと(思い出したくない)明確に決まっていないことに対して何か言っている姿が多いです。でも、生きていく上では白黒明確に区別のついた状態ではない、曖昧な状態の方がよいことの方もあります。例えば自分が幸せかそうじゃないか。そもそもとして、こういうことを考えてしまう時点でもう幸せではないという見方もありますが、今回は置いておきます。個人的にはまったくその通りだと思いますが。

幸せであると認識すると幸せの終わりの始まりがやってきてしまう。そんな気がしています。なんか少し量子みたいな話ですね。二重スリットのアレです。観測すると変わってしまう的なやつ。
えろげに人生の大切なことの全てを教えてもらってる者としてはサクラノ詩

人にとって、度が過ぎた幸福は、苦痛でしかなく、
また、苦痛自体も幸福と背中合わせのものでしかない。
不幸もまた、幸福の変わった風景でしかない

 辺りの話になるでしょうか。
どんどん話がずれていく気配をびんびん感じているので、ここらで強引に話を戻すと、今作でかやりとあゆきと『僕』の間で結ばれる『親いない同盟』という形が先の引用に書かれている

居場所がない人のための居場所ではない。
居場所がない人が。居なくなれる場所。居なくなって、待っていられる。
心を動かす何かが近づいて通り過ぎるのを。

 という少しふわったした繋がりの優しい場所になったのかなと思います。作中の序盤辺りで親いない同盟は結ばれますが、このワードってそんなに登場しないんですよね。たぶん2.3回くらいでしょうか。おそらく、1号、2号であるあゆきとかやりもそんなに明確にやっているわけではなく、ごっこ遊びの延長のような形で楽しんでいるのかなと思います。

ただ、『お互いをだいじに思うこと』という1点を守れさえすれば。これさえ守ることができれば居場所は確保できます。主人公にとっては過去にあった『うまくいかなかったこと』。無責任が起因で起きてしまったことを防ぐことにもなります。無関係を起こさないための添え木のようなものですね。
また、この同盟を結ぶシーンでそれぞれが抱えているものが語られます。
かやりは『居場所を探している』
あゆきと『僕』は『目的なく生きるのはつらい』
かやりだけちょっと違いますが、どれも親いない同盟を結ぶことで解消、もしくは緩和できそうなものです。同盟を結ぶことでかやりは居場所が見つかり、あゆきと『僕』は目的がこの先できても隣に誰もいないつらい状態を回避することができます。現状でいうならば、少し弱いですが同盟でいることは目的のようなもの。またはそれを与えてくれる役割をもたらしてくれそうです。

かやりの絵『つらくない』が完成することで同盟の正しさは明確な形として現れます。『僕』はかやりの絵に対する執着について、幸せにするものであるか疑問を感じていました。きっとそれはかやり一人で描き続けていたら、その通り、幸せなものにはしなかったと思います。絵に向き合っているときのかやりは傍から見ても、危うい感じでしたし。
ただ、親いない同盟1号、3号であるあゆきと『僕』が見守っている中で完成したそれは、まさに3人の今を表す『つらくない』になりました。3人でいたからこそ描けた絵であって欲しいなと思ってしまいます。描き始める前にあゆきが尋ねた「どんな絵を描くの?」に対して「んー……やさしいせかい」と返しているので、少なくとも3人になったからこそ描けた絵だとは思っています。
絵についてかやりは

「キラキラしてなくていいんだ。影ができないように……」

と一言だけ絵について語ります。
明るいとその分だけ暗い影ができてしまいます。それはまるで幸せのゼロサムゲームみたいです。誰かが幸せになった分だけ、誰かが不幸になってしまう。
でも、みんな灰色。影の無いようにすれば、それはみんな一緒の、ある意味みんな幸せでもあり、みんな不幸でもある。同じ世界になります。あゆきが語っていた『住む世界が違う』が無くなりましたね。

そんな感じのことがかやりの絵には込められてるのかなとか思ったんですが、よくもまぁこんだけ解釈広げたなと今自分でもびっくりしました。怖がっている誤読以上の何かをやってしまっている気がする。
とまれ、それは置いておいて、今までロリータシリーズの終わり方って基本的にふんわりと優しく終わるようなイメージがあったんですが、今作ではこの絵の完成という明確な形と一緒に物語が終わっているんですよね。作中では曖昧を題材にしているけど、物語としては初めて明確な形で終わりを見せるというのも少し面白いです。

【キャラクター】
・『僕』
この感想書いてて気づいたんですが、ハーレム双子ロリータから主人公に名前付かなくなってたんですね。Ci-enで【ロリータシリーズの答えになるような作品にしようかなという意気込みもありました】という記載があったので、明確に区切っている気がします。
今作の主人公はロリコンであることを受け容れる過程も描かれていて、Welcome to the our world...って感じでした。もう戻れないよ。おめでとう。
かやりの言動に対するツッコミのようなモノローグが好みでした。基本的には丁寧な言葉で書かれているけど、ツッコむときは「~じゃん」みたいなフランクな書き方になっていたり。前作の愛欲姉妹ロリータの主人公がめちゃ強だったので、今回は強くない主人公でよかったというか好みに近い姿をしていました。

・かやり
主人公の呼び方「おにぃちゃー」が好きな兄呼びの一つに加わりました。普段のぬぺっとかぬぼーといった感じとえちぃシーンになった時のギャップがめちゃくちゃよかったです。かわいい。ちょっと闇モードになった時に瞳のハイライトが消える感じも好きでした。あと忘れてはいけない声の良さ。ふわっと静かなんだけど芯はしっかりあると言った感じでとても耳に良い声でした。特に回想シーン名【谷】で主人公に対して話しかけるときのウィスパーボイスは催眠音声聴いている気分になって耳が幸せでした。
回想シーンとしては【トラバース】と【アルペングリューエン】が好きです。

【トラバース】は中に出されたものがあとから流れ出てくるシーン好きです。ここのCGのかやりの笑顔がとてもかわいい。
アルペングリューエン】はゴムが無くなるまで出して生で最後に出すという流れが好きなんです。初めて見たのは『LOVESICK PUPPIES -僕らは恋するために生まれてきた-』なんですが、そこで好きになって以降ずっと好きです。

・あゆき
かやりとは対極の明るいキャラなんですが、元からそうであったのではなくそうなってしまった類の記載が作中にある通り、一番かなしい子なのかもしれない。あゆきは強い子だね……。かやりと主人公の二人だと平坦になり過ぎてしまう日常を尖がらせるよいキャラでした。ばあやに普段されているようなお小言めいた言い方で主人公に話しかける姿がかわいかったです。
こちらも回想シーンとしては【アルペングリューエン】が入ってしまいますが、【朝露】の中で出てくる経産婦という言葉が、キャラクターと言葉の意味のギャップというかロリコンの罪のようなものを刺激してきてよい感じでした。

冒頭にも書きましたが、今後も続いていって欲しい作品、シリーズです。
ロリ系統の用語がFANZAで規制されたりとロリ系作品に厳しい流れが来そうですが頑張って欲しいなと願っています。