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『幸せが生まれ、鮮やかな色合いで輝く』ことを願う場所

瓜を破る感想

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Xのプロモーションで見たのか、どこかのサイトの広告で見たのか記憶にないですが、そういう広告系統で見た漫画で既刊全部買うという珍しいことするくらいには面白かった漫画『瓜を破る』の感想です。どうやらドラマ化も決まってるみたいですね。

あらすじは30歳を超えても処女であることがコンプレックスになっている主人公まい子とたまたま出会った鍵谷の二人と、周囲の人間関係数珠つなぎの日々が描かれています。ジャンルとしてはガッツリ恋愛ものです。各キャラに派手なキャラ付けがされているわけでもなく、もしかしたらすぐ隣の世界では同じようなこともあるかもしれないくらいに普通の日々が描かれています。

読んでいて感じたこの作品の良いところ。
それは各キャラがちゃんと考えて生きている感じがするところです。漫画という媒体ではあるため各キャラもシナリオの中で動いてはいるんだけど、その動きの中でもしっかりと考えていて、そして得た結論を持って自身の行動を決めている感じがとてもよい。私が単に内面描写が多く、ウェットな人間関係、ある種の人情モノめいた話が好きだからというのが良いと感じる原因、理由ではある。

先に書いたように物語のメインとしてはまい子と鍵谷の二人ではありますが、その周辺キャラにもしっかりとエピソードがあり、しかもその内容もしっかり濃いため、「他のキャラの話はいいからメインの二人を進めろ」みたいな気分にはまったくなりませんでした。メイン二人では決して描けないエピソードを他のキャラで描いている感じ。

ということで各キャラのエピソードの感想です。
ネタバレ嫌な人は以下読まないようお気をつけ。

まい子&鍵谷編

お互い自分に自信があるタイプではないため色々考えこんでしまいがちではありますが、それだけお互いに好きなんだなと読むと、とても良い。一貫してるのは『考えていることは伝えないとわからないよ』というところではあるんですが、相手のことを考えてるからこそ言えないこともあったりで悩ましいのもわかる感じ。私は相手いるわけでもないので、想像だけど。

付き合うことになり、お互いがそれをきっかけに少し人生を進めてみようと考えられるようになったりと恋愛以外での部分でもお互いがお互いのためになっている感じもとても好きです。


序盤でまい子がちんすこうに対して「モヤァ」としてたのが結構好きです。中学生男子みたいな発想してるやん。

味園編

味園と辻の2人のプラスマイナスな感じのコンビな感じ良いですよね。喧嘩したからこそ仲良くなった感じもまた良いです。最終的にお互い一人になったら同居しようかと話したり、他の人が割って入ることもできなさそうな友人関係、入社当初よりも喧嘩した後の方が確実に仲深まった感じいいなぁと思いました。
味園が彼を探しにタイに行ったりする話のスケール感的に、やろうと思えば、味園の話だけで短編で十分独立させられそうな話でした。

塚田編

それまでの描写で割とクールでドライな性格が描かれていましたが、そうなった経緯がわかったりする話でした。『クール』と『冷たい』と『嫌なやつ』の境界ってたしかに考えてみると結構微妙なラインな気がします。冷たいと嫌なやつは≒な感じもするけど。彼である柚を押し倒したくなる(押し倒した)描写が2回あるあたり、本質的には全然クールとは真逆のパッション系なのかなと思いました。我慢の限界超えて押し倒したときの表情めっちゃよい。

染井編

結婚して子供ができたオタクの悲哀が伝わってくる話でした。子供ができるとイベント参加大変そうですよね・・・。
自身が幸せと認識はしていても、どうしても隣の芝生が青く見えてしまう状態。乗り越えるのに必要なのはやっぱ更なる強度での幸せの上書きや再認識なのかな。これは別に結婚してるしてない問わず、誰にでも起こりえることではあるので、考えてみる価値はありそうなポイントです。

沢編

唯一恋人ではなく、猫とのスイートな日々が描かれていますが、個人的にはこのまま一人路線貫いて欲しいなと思います。作中でも語られてはいますが、一人で生きていく選択肢が実際許容されている世界になり始めているので、そこから「やっぱ一人はね・・・」みたいな話になると、ちょっとショック受けるかもしれない。

猫に対して「あなたと暮らして幸せだけど、あなたが人の言葉を喋ったらイヤかも」は人ではなく、ペットをパートナーとする人の真理のようなものな気がします。喋らないからこそペットと呼ばれる生き物が良き友、良き隣人で居られるというのはあると思う。

小平編

メインとなるまい子&鍵谷編を除くと一番好きな話かもしれないです。
実際は好きというよりも共感できるところが多いかもしれない。

小平はいわばルッキズムの犠牲者的ポジションだと思うんですが、このポジションに立つとどうしても自身もルッキズムに陥ってしまうのはあるあるだと思います。自身の容姿がコンプレックスになっているため、自然と他者に対しても容姿が優れているかどうかが優先的に判断基準となってしまう。自分がされてクソだと思ってるならやめればいいんだけど、やめられないんですよね。業みたいなものだと思います。
小平の場合、容姿をコンプレックスとしているから人付き合いを避けるとかではないため、ケイタと出会うことで自身の本当の魅力、『かわいい』ではなく『カッコイイ』が自身のカラーだと気づくことができて本当に良かったと思います。

 

あとがき

なんかどれもペラペラな感想だけど、本当に良い作品でした。8巻の終わりがとても気になるところなので、新刊出るの楽しみにしてます。
書こうと思えば小平編でもっと色々書けるんですが、作品とは関係ないし読んでて気持ち良くない話が多々になってしまうので、やめておきました。
『色々あったし今もまだあるけど、私はそれなりに楽しく生きています』が全てです。